
「漆塗りは長く使えますか」
よくお客様に聞かれることの一つです。
今回は、木製漆塗りの器に限って話をします。
木製漆塗りの器には、少しでも長持ちするよう、下地に布を貼ったり、何回も塗り重ねたりしているものがあります。
ただ、この問いには簡単に答えられないところがあります。
例えば、お正月に使う重箱。
年に一度なら、50年使っても50回です。
使った後にきちんと手入れをして保管され、何十年も、何代にもわたって、美しい姿を保っている重箱もあります。
正倉院の宝物や古美術にも、長い年月を経て、今も美しい姿を残す漆の品があります。
大切に保存されてきたこととともに、漆の強さを感じる例の一つです。
一方、毎日使う汁椀なら、1年で365回。
朝昼晩と使えば、もっと多くなります。
毎日使うお椀は、洗う回数も、手に取る回数も多い。
使用頻度が高ければ、落とす機会も増え、少しずつ傷がついたり、塗りが摩耗したりもします。
料理屋さんでも、季節ごとに器を替える場合と、同じ器を一年中使う場合では、使う回数が違います。
同じ「長く使う」でも、使用回数は随分違います。
「漆塗りは長く使える」
重箱や季節の器では当てはまる部分もありますが、毎日使う汁椀では、少し話が違ってきます。
一方で、毎日使う汁椀を塗り直しながら、長くご愛用いただいているお客様もおられます。
傷んだら直して、また使う。
そうして、そのお椀を「長く使う」こともできます。
何年使えたか。
その間、どのくらい使ったのか。
その漆器と、どう向き合ってきたか。
長く残っていることと、毎日使い続けられること。
「長く使える」という言葉の裏には、使う頻度や扱い方、そして使う人の漆器との向き合い方もあるのだと思います。
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